埼玉県幸手市に、高齢者の方向けのコミュニティモールがある。
NPO元気スタンド代表の小泉圭司さんが運営する元気スタンド・ぷリズムだ。
元気スタンド・ぷリズムは、「住み慣れた地域で元気に楽しく安心して生活する介護予防」を理念としている。
小泉さんは元々スーパーマーケットで勤務されていたが、
特に男性は会社の人間関係が中心で、地元からは孤立していくことが多く、企業から地域への生活ステージを転換していく場所が必要だということを感じ、コミュニティモールを作った。
地域での繋がりがない場合どうなるか。
「やることがないことによって生きがいがなくなり、外に出かけないことで、足腰の筋力は低下していきます。出かけないことによって食欲低下が生じ低栄養になり、交流がないことによって孤立化します。そして交流がないことで自分自身と向き合う時間も減少し、病気の発見も遅れることで、結果的に要介護状態になるリスクが高まるのです」と、小泉さん。
そのような地域での課題と向き合い、小泉さんは元気スタンド・ぷリズムを立ち上げた。
元気スタンド・ぷリズムでは、「押し付けない介護予防」をコンセプトにしている。
そのために自主的に楽しむことを目的とし、コミュニティ喫茶をまずは作った。
コミュニティ喫茶には、地域の高齢者がたくさん集まって、知り合いを作ったり、生活や介護予防につながる情報を相互に発信している。また、カフェに来てお話しすることで、特に精神的な面での介護予防につながっている。
また、元気スタンドでは、コミュニティ喫茶だけでなく、「生きがいサポート」や「生活安心サポート」などのサービスも地域住民に提供している。
例えば、高齢者が主役となるお惣菜屋さん「元気スタンド・ぷライス」がある。
実際に高齢者の方が惣菜を作り販売することで、高齢者の方が何歳になっても働ける場を提供している。単なる“居場所”ではなく“活躍できる場所”にまで昇華させた事例だ。
また、共助で支え合える、地域支え合い事業「幸せ手伝い隊」も運営されている。
幸せ手伝い隊は、公的介護制度では対応できない日常生活の困りごとを地域の元気な高齢者などのボランティアがお手伝いできる仕組みだ。
依頼者は日常生活の困りごとを解決でき、ボランティアさんは「やりがい」や「介護予防」を自然な形で日常生活の中に取り入れることができる。
加えて、レンタルセニアカーという高齢者向けのコンパクトな移動器具も取り扱っており、いきたいところに行けるような支援も行っている。
レンタルセニアカーは自費(350円)ではあるが、利用をきっかけに、足腰に不安のある方々の外出が増え、カラオケや買い物、圏域外の図書館や市役所にまで足を運んでいる方が増えている。
レンタルを開始した2013年9月からの利用数も増え、現在では月に20~30件程度貸し出されているとのことだ。
-レンタルセニアカーで外出される様子-
「今後は、コミュニティモールに子育て支援と世代間交流ができる仕組みを作っていきたい」と小泉さん。
高齢者だけでなく小児や親など地域の様々な方を巻き込んで笑顔を増やしていく予定だ。
そのために社会資源を可視化するためのプロジェクトにも着手した。
地域コミュニティの基盤を作るためには、「資源を作る人」「資源をつなぐ人」「資源を活用する人」の3者が必要だが、元気スタンドでは、その全ての役割を一手に担っている。
認知症や脳血管疾患(脳梗塞や脳卒中)患者の方が今後もますます増えていく日本では、強制的に介護予防のための場や資源を作り参加を促すだけでなく、自然な形で結果的に介護予防ができる場も求められているのではないか。それはつまり、高齢者の方々が自然と参加したいと思うような場であることが必要で、かつその場を情報発信する手段も必要であるということだ。
元気スタンド・ぷリズムの今後の展開に注目したい。