【活動報告】介護職員ごとのケアのバラ付き分析 その2(現場の介護職員へのアプローチ)
2017/11/17
前回の記事では、ケアレンツが取り組んでいる【介護職員ごとのケアのバラ付き分析】の概要についてご案内しました。
(https://www.oyamiru.com/pro/article_detail/116)
今回は、更に具体的な取り組みの詳細について、一部ご紹介したいと思います。
介護職員ごとのケアのバラ付き分析を行って、何をしたいのか?
「分析結果を眺めて知的好奇心を満たして満足したい」のではないのです。
「困っている現場を実際に変えていきたい」。それが、我々が求めるゴールポイントです。
そのため、「分析結果を”誰”に見せるか」「見せた人にどのような効果を与えることができるか」について、常に意識しつつ、出すべきアウトプットを定めています。
”誰”の部分については、様々ですが。
まず、最初に、各職員に対して、個別にアンケートをとります。アンケートでは、各職員が、個々の入居者に対して、どのようなケアを行っているか、ADL 単位で設問し、回答してもらいます。
(図1:アンケート項目サンプル)
上のサンプルでは、かなり荒い目で設定していますが、実際には施設ごとに、当該施設の実態になるべく則する形で設問や選択肢を調整しています。設問は数を多く目を細かくすればするほど、分析用のデータはバラエティに富んだ形で集まりますが、忙しい最中に余計な時間を割いて回答する職員が疲弊しますので、さじ加減が大変重要です。
こうして集まったアンケート結果を、アレコレ煮込むと、ADL × 入居者の単位で、どのケアが各職員ごとにバラついているかの表が得られました。
(図2:バラ付き集計概要図)
この表は、その施設に対する大雑把な地図として、以下の用途で役に立ちます。
実際に複数の施設(老人ホーム)でデータをとり分析をしたところ、大変大雑把ですが、以下の傾向が見受けられました。
ただ、ここで得られた傾向が安直に汎用的な適用ができるわけではなく、例えば重度寝たきりの入居者の場合は歩行ケアに関するバラ付きが無かったり(出ようがない)しますので、出てきた数字をそのまま機械的に鵜呑みにしては駄目で、あくまで俯瞰的に見た上で詳細調査の取っ掛かりとしての用途を主とすべきと考えています。
さて。ここまででの分析でもその施設に対する改善のヒントが多く得られますが、今回の主題である、「現場の介護職員」へのアプローチとしては、まだまだ不足です。
現場の介護職員、特に施設に勤めだして日が浅い新人職員がよく抱える悩みとして、以下のようなパターンを聞きます。
…どこの業界でもあるあるネタですが、未経験者が多く入ってきて、かつ、ワンミスが即事故に繋がる介護現場では、新人ストレスフルな状況ですね。
いずれにせよ、まず、各入居者ごとの標準的な介助方法基準は定めないといけません。入居者は日々刻々と調子や機嫌が変化し、昨日できたことが今日できるとも限らないわけですが、それでも、です。
ある時点での物差しを一旦定めることにより、「標準で定めた介助方法はこうだけど、今日はこういう状況だからあえて標準とは異なる対応をしよう」というのを各職員が安心してできるようになり、かつ、現場リーダーへの入居者状況変化の報告もしやすくなります。また、現場リーダーは、入居者の日々の状況を各介護職員から聞いて情報を集め、物差し自体に調整を掛けることにより、「入居者の現時点での状況に合わせた最適なケア」を提供できるようになるところまでもっていけるのが理想です。
(半年前に立てられたケアプランが、入居者の現状にもう全く即しておらず、役立たずになってしまっていること、ありませんか?)
(図3:施設基準介助レベル)(サンプル)
物差しとなる施設基準介助レベル(図3)を定めたら、個別職員とのアンケート結果の比較により、各々の職員がどれぐらい基準値から外れているのかが、入居者×ADL 単位で細かく出てきます。
(図4:個別職員と施設基準値との乖離)
この図を元に、職員は自分の普段の仕事を振り返り、どこを改めるべきか、気づきを得ることができます。
ここで大事なのが、数字を独り歩きさせないことです。ここで出てくる数字は、あくまでも確信犯的にかなり荒い目で振るった数値であることを常に念頭に置いておかないといけません。
(乖離値が大きい職員ほどなんらかしかの改善課題を抱えているであろうと”見込まれる”わけですが、それは職員のやっていることが実際に間違っているのか、あるいは、職員は正しいことをやっているがアンケートの回答時に解釈意識の違いから間違った選択肢を選んでいるだけなのは、あるいは、職員の体格などの問題(小柄な女性で大きな男性職員と同様の介助ができないなど)に由来するやむを得ざる事情によるものかもしれませんし、はたまた、施設基準介助レベルの設定のほうが誤っているかもしれません。)
根本的には、介護リーダー(または同僚職員)との密接な話し合いによる問題点の提起と改善策の検討・共有を行い現場の意識改革をしていくことが大事であり、その一助として使うべきものと、我々は考えています。データを渡すときにはその旨を含んだ上で、介護リーダーの方にお渡しする形にし、その後の詳細検討も共に行ったりさせて頂いております。
今後は、現在取り組ませて頂いてる施設との連携をさらに深め、荒く設定している目をどう細かくしていくかや、施設基準介助レベルの文章による細設定、定期的なデータとりによる before - after 比較など、取り組んで行く予定です。
(https://www.oyamiru.com/pro/article_detail/116)
今回は、更に具体的な取り組みの詳細について、一部ご紹介したいと思います。
介護職員ごとのケアのバラ付き分析を行って、何をしたいのか?
「分析結果を眺めて知的好奇心を満たして満足したい」のではないのです。
「困っている現場を実際に変えていきたい」。それが、我々が求めるゴールポイントです。
そのため、「分析結果を”誰”に見せるか」「見せた人にどのような効果を与えることができるか」について、常に意識しつつ、出すべきアウトプットを定めています。
”誰”の部分については、様々ですが。
- 「現場の介護職員」
- 「現場の介護リーダー」
- 「施設長」
- 「本社のマネージャー」
- 「サービス利用者(老人ホームの場合、入居者)」
- 「入居者の家族」
【STEP1:アンケートデータの収集】
まず、最初に、各職員に対して、個別にアンケートをとります。アンケートでは、各職員が、個々の入居者に対して、どのようなケアを行っているか、ADL 単位で設問し、回答してもらいます。
(図1:アンケート項目サンプル)
上のサンプルでは、かなり荒い目で設定していますが、実際には施設ごとに、当該施設の実態になるべく則する形で設問や選択肢を調整しています。設問は数を多く目を細かくすればするほど、分析用のデータはバラエティに富んだ形で集まりますが、忙しい最中に余計な時間を割いて回答する職員が疲弊しますので、さじ加減が大変重要です。
【STEP2:アンケートデータの集計】
こうして集まったアンケート結果を、アレコレ煮込むと、ADL × 入居者の単位で、どのケアが各職員ごとにバラついているかの表が得られました。
(図2:バラ付き集計概要図)
この表は、その施設に対する大雑把な地図として、以下の用途で役に立ちます。
- 施設が提供しているケア全体のバラ付きの俯瞰化(どのケア工程でバラついているか、どの入居者でバラついているか)
- 職員カンファレンスの短時間効率化(要チェックポイントが赤色でわかりやすく図で示されるので、主にそこを対象としての集中的なカンファレンスの実施をすることにより、的を絞った対策検討が可能)
実際に複数の施設(老人ホーム)でデータをとり分析をしたところ、大変大雑把ですが、以下の傾向が見受けられました。
- 食事ケアのバラ付きは小さい → (食堂に入居者を集め、複数の職員が同時にケアを行うため、先輩職員のやっていることを参考にして真似することができる)
- 口腔&整容ケアが一番ばらつきが大きい → (職員が入居者の個室に入り、一人介助の形で行うため)
- 入浴ケアのバラ付きは、施設によってバラ付き具合が大きく異なる → (入浴の手順が確り標準化されているかの要素が影響している)
ただ、ここで得られた傾向が安直に汎用的な適用ができるわけではなく、例えば重度寝たきりの入居者の場合は歩行ケアに関するバラ付きが無かったり(出ようがない)しますので、出てきた数字をそのまま機械的に鵜呑みにしては駄目で、あくまで俯瞰的に見た上で詳細調査の取っ掛かりとしての用途を主とすべきと考えています。
【STEP3:個別職員へ個別カスタマイズアプローチ】
さて。ここまででの分析でもその施設に対する改善のヒントが多く得られますが、今回の主題である、「現場の介護職員」へのアプローチとしては、まだまだ不足です。
現場の介護職員、特に施設に勤めだして日が浅い新人職員がよく抱える悩みとして、以下のようなパターンを聞きます。
- 各入居者をどのように介助すべきか、事前に教えて貰えない。
- 介護リーダーや先輩職員に詳しく聞くと、 「状況に応じて適当にやって」 「それぐらい自分で考えて行動して」 と言われる。
- 仕方ないので自分なりに最善のやり方を模索して実行に移すと、 「そんなやり方は間違っている」 「勝手に動く前に事前にちゃんと相談しろ」 と言われる。(2 に戻る)
…どこの業界でもあるあるネタですが、未経験者が多く入ってきて、かつ、ワンミスが即事故に繋がる介護現場では、新人ストレスフルな状況ですね。
いずれにせよ、まず、各入居者ごとの標準的な介助方法基準は定めないといけません。入居者は日々刻々と調子や機嫌が変化し、昨日できたことが今日できるとも限らないわけですが、それでも、です。
ある時点での物差しを一旦定めることにより、「標準で定めた介助方法はこうだけど、今日はこういう状況だからあえて標準とは異なる対応をしよう」というのを各職員が安心してできるようになり、かつ、現場リーダーへの入居者状況変化の報告もしやすくなります。また、現場リーダーは、入居者の日々の状況を各介護職員から聞いて情報を集め、物差し自体に調整を掛けることにより、「入居者の現時点での状況に合わせた最適なケア」を提供できるようになるところまでもっていけるのが理想です。
(半年前に立てられたケアプランが、入居者の現状にもう全く即しておらず、役立たずになってしまっていること、ありませんか?)
(図3:施設基準介助レベル)(サンプル)
物差しとなる施設基準介助レベル(図3)を定めたら、個別職員とのアンケート結果の比較により、各々の職員がどれぐらい基準値から外れているのかが、入居者×ADL 単位で細かく出てきます。
(図4:個別職員と施設基準値との乖離)
この図を元に、職員は自分の普段の仕事を振り返り、どこを改めるべきか、気づきを得ることができます。
- 「私」は「どの入居者」のケアについて、より意識を払うべきか → 問題提起
- 「私」は「どの入居者」のケアについては、現状通りで問題ないか → 安心感
ここで大事なのが、数字を独り歩きさせないことです。ここで出てくる数字は、あくまでも確信犯的にかなり荒い目で振るった数値であることを常に念頭に置いておかないといけません。
(乖離値が大きい職員ほどなんらかしかの改善課題を抱えているであろうと”見込まれる”わけですが、それは職員のやっていることが実際に間違っているのか、あるいは、職員は正しいことをやっているがアンケートの回答時に解釈意識の違いから間違った選択肢を選んでいるだけなのは、あるいは、職員の体格などの問題(小柄な女性で大きな男性職員と同様の介助ができないなど)に由来するやむを得ざる事情によるものかもしれませんし、はたまた、施設基準介助レベルの設定のほうが誤っているかもしれません。)
根本的には、介護リーダー(または同僚職員)との密接な話し合いによる問題点の提起と改善策の検討・共有を行い現場の意識改革をしていくことが大事であり、その一助として使うべきものと、我々は考えています。データを渡すときにはその旨を含んだ上で、介護リーダーの方にお渡しする形にし、その後の詳細検討も共に行ったりさせて頂いております。
今後は、現在取り組ませて頂いてる施設との連携をさらに深め、荒く設定している目をどう細かくしていくかや、施設基準介助レベルの文章による細設定、定期的なデータとりによる before - after 比較など、取り組んで行く予定です。