世界に先駆けて超高齢社会を迎えている日本において、ますます介護業界は変化していくだろう。団塊世代が高齢者になり、私たちもいずれは高齢者になる。
介護のあり方、地域のあり方、職種の変化、高齢者が使うデバイスの増加など、数年後の介護はどうなっているかは分からない。そもそも、2000年に介護保険制度が構築され16年経ち、当時の介護のあり方と現在の介護のあり方も大きく変化した。
変化は、後世に残していく必要があり、その成長と破綻双方の歴史を受け継いでいく必要がある。
そして何より、その人が“生きた証”の一瞬一瞬を捉えることはどれほど素晴らしいことか。
介護業界で、高齢者の方々の“笑顔”や介護の“状況”を切り取っている写真家がいる。
写真家の近藤浩紀さんだ。
近藤さんご自身も脳性麻痺がきっかけで幼い頃から車椅子に乗ることになった。
近藤さんとお話をしているとその明るさとアグレッシブさに心奪われる。
-近藤浩紀さん-
近藤さんは、2011年夏にシドニーへ留学し、せっかく海外へ留学するのだからと購入した一眼レフカメラが、現在の写真家として活動するきっかけになった。
2012年に帰国した後、独学で写真のことを勉強し、2013年に介護業界で写真を撮るきっかけを得て、現在の活躍に至っている。
現在は介護現場、介護施設や介護の勉強会・セミナーの撮影依頼が多いという。
近藤さん
「高齢者の方々はカメラが苦手な方も多いので、よく話して人間関係を作ってから撮影します。なるべく歩み寄って、その人のナチュラルな一面を撮りたいのです。加えて、私が車椅子ユーザーということもあり、皆様と同じ目線でお話できるのも安心してくれる一要因になっていると思います。また、カメラ自体は一瞬一瞬を切り取るものですが、その人の背景も併せて映し出すことを意識しています。その人が何を大事にしていて、どう感じているのか。それを一枚の写真に残していくことができれば、と考えています。」
介護の現場では、色々課題が山積みな部分は否めないが、介護の現場では実際に笑顔もたくさんある。そして、写真は最も説得力がある手段のひとつだ。
近藤さん
「介護業界の変遷を未来に繋いでいくこと。未来をより良いものにしていこう切磋琢磨している方々を数十年後に伝えていくこと。そして、識字障害の方でも写真だと伝わること。ひとつの教科書として、介護を紡いでいくことを意識して活動しています。」
近藤さんの写真のクオリティは非常に高い。
介護雑誌の「おはよう21」の表紙の撮影等も行われており、介護業界でも有名なカメラマンだ。
また、近藤さんは未来をつくるKaigoカフェ(http://www.kaigocafe.com/)や、Ubdobe(http://ubdobe.jp/)などでも活動されており、高齢者の方々だけでなく、介護の現場で活躍している若いスタッフの一瞬も切り取っている。
「介護の魅力を熱く語ってくれる若い介護スタッフの方も非常に多いですね。介護現場はまだまだ元気だぞ!魅力もあるぞ!という事も、もっと世に広めていきたいです。」
近藤さん
「私は小さいころから車椅子ユーザーだったので、私の周りにいる友人も、私をきっかけにして介護業界に入ったひともいます。私と接することで、『車椅子ユーザーが、何ができるか、できないかを知って介護の道に興味を持った』と言ってくれました。高齢者も含め障がいがあっても、多くの人がもっと外に出て行ってもらいたいと思っています。誰かの役に立つこともあれば、私のように役割を持たせてもらうこともあるのです。」
今後、近藤さんは「写真×介護×○○」といった3つの組み合わせを新たに考えているそうだ。それは例えば「写真×介護×旅行」であったり「写真×介護×日常」、「写真×介護×家族」であったりする。
「現状は介護施設での撮影が多いので、今後はご家族様からのご依頼等で、ご自宅で撮影もしてみたいと考えています」と、近藤さん。
今後も、近藤さんが歩む写真×介護の道の後に、介護の歴史が映し出されていく。
近藤さんのページはこちら
HP: http://www.hirokikondophotography.com/
FB: https://www.facebook.com/hiroki.kondo.photography