人口動態の変化により今後のセラピストの職域はどう変わるのか?(その1:高齢者増が与える影響)
2016/02/01
吉村 和也(Yoshimura kazuya)
理学療法士
株式会社メディヴァ( http://mediva.co.jp/ ) コンサルタント
Asia Physical Therapy Student Association Supporter
1988年生まれ。目指しているのは「持続可能で質の高い医療や介護、予防等のサービスが当たり前に受けられ、人々がその人らしく生き・老い・生涯を全うできる社会の実現」。 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻修士課程修了後、厚生労働省で予防・健康づくり政策に携わり、現在は「患者視点の医療改革」を目指す株式会社メディヴァのコンサルタントとして奮闘中。自治体向けの地域包括ケアシステム構築支援として地域在住高齢者のニーズ調査、在宅療養推進事業の企画・運営等を行うほか、中国等における日本の医療・介護事業のアウトバウンド等にも従事。また、国境を超越して活躍する次世代のセラピストが育つ環境の整備、日本のリハビリテーションのグローバル展開等にも関心を持ち、公私で活動中。
株式会社メディヴァ( http://mediva.co.jp/ ) コンサルタント
Asia Physical Therapy Student Association Supporter
1988年生まれ。目指しているのは「持続可能で質の高い医療や介護、予防等のサービスが当たり前に受けられ、人々がその人らしく生き・老い・生涯を全うできる社会の実現」。 京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻修士課程修了後、厚生労働省で予防・健康づくり政策に携わり、現在は「患者視点の医療改革」を目指す株式会社メディヴァのコンサルタントとして奮闘中。自治体向けの地域包括ケアシステム構築支援として地域在住高齢者のニーズ調査、在宅療養推進事業の企画・運営等を行うほか、中国等における日本の医療・介護事業のアウトバウンド等にも従事。また、国境を超越して活躍する次世代のセラピストが育つ環境の整備、日本のリハビリテーションのグローバル展開等にも関心を持ち、公私で活動中。
『今後高齢者は増えるからこの業界は将来安泰だ。』
昔はそう思っていた人も少なくなかったですし、実際にそうでした。では、今後はどうでしょうか? 最近学生や若いセラピストと話しをしていると、将来に対して漠然とした不安を抱える人が年々増えている印象があります。皆さんはどう考えていますか? それは何故ですか? そして何故そのような現状になると思いますか?
一度、高齢者を取り巻く数字をいくつか見て考えることで、そうした漠然とした考えた整理させるのではないでしょうか。
この議論に関連する要素はさまざまあります。今回はその基本であり根幹になる人口動態を見てみます。日本の総人口はこれまで長年増え続けてきましたが、2010年頃をピークに減少に転じました(図1)。その他にもお気づきの点はいくつかあるのではないでしょうか?
今度は同じ数字を2010年を基準にその変化率で見てみます(図2)。すると、図1では見えにくかったさまざまな特徴に気づきます。年齢階級別人口の推移を見ると、次のような特徴が見えてきます。
・生産年齢人口(15~64歳)は1995年がピークで、現在減少し続けている
・前期高齢者人口(65~74歳)は2015年が最も多く、今後減少していく
・後期高齢者人口(75歳以上)は2025年まで急増し、その後ほぼ横ばいとなる
・85歳以上人口は、2040年に2010年の2.7倍まで増え、一度減少した後、再び増加していく
85歳以上の伸び率が際立っていることは誰の目にも明らかです。
一方、近年「2025年問題」という言葉を聞く機会が増えてきている印象があります。2025年は団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になる年であり、日本が高齢社会を乗り越えるためにさまざまな仕組みの整備する期限として、行政を中心に注目されています。「地域包括ケアシステム」などがその政策の代表です。
ではなぜ団塊の世代が後期高齢者になる2025年が注目されるのでしょうか。この理由もいくつかありますが、その中でもポイントとなるのが
昔はそう思っていた人も少なくなかったですし、実際にそうでした。では、今後はどうでしょうか? 最近学生や若いセラピストと話しをしていると、将来に対して漠然とした不安を抱える人が年々増えている印象があります。皆さんはどう考えていますか? それは何故ですか? そして何故そのような現状になると思いますか?
一度、高齢者を取り巻く数字をいくつか見て考えることで、そうした漠然とした考えた整理させるのではないでしょうか。
この議論に関連する要素はさまざまあります。今回はその基本であり根幹になる人口動態を見てみます。日本の総人口はこれまで長年増え続けてきましたが、2010年頃をピークに減少に転じました(図1)。その他にもお気づきの点はいくつかあるのではないでしょうか?
今度は同じ数字を2010年を基準にその変化率で見てみます(図2)。すると、図1では見えにくかったさまざまな特徴に気づきます。年齢階級別人口の推移を見ると、次のような特徴が見えてきます。
・生産年齢人口(15~64歳)は1995年がピークで、現在減少し続けている
・前期高齢者人口(65~74歳)は2015年が最も多く、今後減少していく
・後期高齢者人口(75歳以上)は2025年まで急増し、その後ほぼ横ばいとなる
・85歳以上人口は、2040年に2010年の2.7倍まで増え、一度減少した後、再び増加していく
85歳以上の伸び率が際立っていることは誰の目にも明らかです。
一方、近年「2025年問題」という言葉を聞く機会が増えてきている印象があります。2025年は団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)になる年であり、日本が高齢社会を乗り越えるためにさまざまな仕組みの整備する期限として、行政を中心に注目されています。「地域包括ケアシステム」などがその政策の代表です。
※地域包括ケアシステムについては、以下をご参照ください。
・厚生労働省:「地域包括ケアシステム」ページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
・三菱UFJリサーチ&コンサルティング:「地域包括ケア」ページ
http://www.murc.jp/sp/1509/houkatsu/index.html
・たすケア
-地域包括ケアについて知っておこう(https://tascare.com/art176)
-地域包括ケアの5つの構成要素(https://tascare.com/art177)
・厚生労働省:「地域包括ケアシステム」ページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/
・三菱UFJリサーチ&コンサルティング:「地域包括ケア」ページ
http://www.murc.jp/sp/1509/houkatsu/index.html
・たすケア
-地域包括ケアについて知っておこう(https://tascare.com/art176)
-地域包括ケアの5つの構成要素(https://tascare.com/art177)
ではなぜ団塊の世代が後期高齢者になる2025年が注目されるのでしょうか。この理由もいくつかありますが、その中でもポイントとなるのが
加齢に伴う受療率や要介護認定率等の伸びです。
受療率そのものは加齢とともに増加していきますが、実は入院と外来では全く異なる数字の動きを示します。図3のように、外来は40代から増え続け、65歳頃から急増、80歳頃をピークに減少に転じます。一方、外来と比較してより重度であり医療費も高い入院に関しては、65歳頃にようやく増え始め、75歳・80歳・85歳と加齢とともに急激に増えていきます。
また、要介護認定者の割合についても、75歳以降は5歳ごとに約10%ずつ増加し、85歳頃には3割以上の人が要介護状態になります(※要支援は含まれていません。)。
こうした数字を見ていると、確かに2025年は「団塊の世代が後期高齢になる」重要な年ですが、受療率等の伸びや各年代の人口の将来推計の関係から、団塊の世代が85歳になる2035年が最もターゲットとすべき年ではないかと思います。図2の85歳以上人口の伸び率を思い出してください。正直ゾッとします。この年までに急激に増加する医療・介護需要への対策を整備していなければ、大量の医療・介護難民が全国に溢れることになります。2035年を各地域がどのような状態で迎えるかが、それぞれの地域がこの超高齢社会を乗り越えられるかの分かれ道になるのではないでしょうか。
これらは世の中のほんの一部の数字を特定の視点から見たものだということを踏まえても、ここまでの数字を見る限り、高齢者に対してセラピストが活躍できる場はまだまだ今後も増え続けそうだと読み取れます。
ただし、切迫した我が国の社会保障情勢の中では、活躍する領域や活躍の仕方は今までどおりにはいきません。我が国の社会保険制度は綱渡り状態です。今後は、予防やヘルスケアの分野でどう活躍するか、劇的に進化を続けるICTやロボット等の技術をどう活かすか等、未曾有の社会状況に合わせてこれまでの常識からのパラダイムシフトが求められています。
さまざまな数字や政策にアンテナを張り、しっかり社会の需要(市場のニーズ)を捉え、自たちが提供できる価値を多様な視点から想像し、新たなカタチで社会に価値を創造していくセラピストが1人でも増えることを期待しています。
受療率そのものは加齢とともに増加していきますが、実は入院と外来では全く異なる数字の動きを示します。図3のように、外来は40代から増え続け、65歳頃から急増、80歳頃をピークに減少に転じます。一方、外来と比較してより重度であり医療費も高い入院に関しては、65歳頃にようやく増え始め、75歳・80歳・85歳と加齢とともに急激に増えていきます。
また、要介護認定者の割合についても、75歳以降は5歳ごとに約10%ずつ増加し、85歳頃には3割以上の人が要介護状態になります(※要支援は含まれていません。)。
こうした数字を見ていると、確かに2025年は「団塊の世代が後期高齢になる」重要な年ですが、受療率等の伸びや各年代の人口の将来推計の関係から、団塊の世代が85歳になる2035年が最もターゲットとすべき年ではないかと思います。図2の85歳以上人口の伸び率を思い出してください。正直ゾッとします。この年までに急激に増加する医療・介護需要への対策を整備していなければ、大量の医療・介護難民が全国に溢れることになります。2035年を各地域がどのような状態で迎えるかが、それぞれの地域がこの超高齢社会を乗り越えられるかの分かれ道になるのではないでしょうか。
これらは世の中のほんの一部の数字を特定の視点から見たものだということを踏まえても、ここまでの数字を見る限り、高齢者に対してセラピストが活躍できる場はまだまだ今後も増え続けそうだと読み取れます。
ただし、切迫した我が国の社会保障情勢の中では、活躍する領域や活躍の仕方は今までどおりにはいきません。我が国の社会保険制度は綱渡り状態です。今後は、予防やヘルスケアの分野でどう活躍するか、劇的に進化を続けるICTやロボット等の技術をどう活かすか等、未曾有の社会状況に合わせてこれまでの常識からのパラダイムシフトが求められています。
さまざまな数字や政策にアンテナを張り、しっかり社会の需要(市場のニーズ)を捉え、自たちが提供できる価値を多様な視点から想像し、新たなカタチで社会に価値を創造していくセラピストが1人でも増えることを期待しています。