スタッフ「湯加減どうだい?」
利用者「ちょうど良い塩梅だぁ」
スタッフ「○○さん、昨日ラーメン食べに行ったって聞いたよ。あの店どうだった?」
利用者「うん、うめがった(美味しかった)。また行ぐべ!」
私が以前、施設管理者として勤めていた介護施設では、お風呂場に設えたヒノキの浴槽にご利用者が湯に肩まで浸かり、
スタッフとの楽しい会話が日々聞こえております。
「ヒノキの浴槽は温泉みたいに身体が温まる」「この施設は他と違ってゆっくり風呂に入れる」「お風呂に入って身体の動きが良くなった」など、
ご利用者にとってお風呂が楽しみの一つになっております。
でも、昔は違いました。
・大半が車椅子のお年寄りなのに、誰も自分で入ることが出来ないプールのような大浴槽。
・職員の作業効率を求め、利用者を裸で寝たまま物のように扱い入浴させる機械浴槽。
大浴槽は、身体の小さくて軽いお年寄りでは浮いてしまい、手すりに捕まらないと入っていられず命がけ。
機械浴槽は寝たきりでない人もストレッチャーに乗せられ、スタッフに裸を晒される。
そんな浴槽しかなかったので、お風呂がキライな利用者も多かったです。
そして、入浴介助するスタッフも腰を痛め、忙しいばかりのお風呂がキライでした。
そうです。誰もお風呂が好きではなかったのです。
そんな残念な大浴槽と機械浴槽をやめ、ヒノキの浴槽に全て入れ替え、業務の流れも全部見直しました。
するとどうでしょう。入浴の時間に余裕が生まれ、利用者と会話を楽しむことが出来るようになったのです。
利用者もスタッフも「お風呂が好き」って言ってくれるようになりました。
そしてお風呂が他の施設と違った取り組みをしたことで、自慢の一つにもなったのです。
私のクライアント施設様の例。機械浴を撤去し、青森ヒバの浴槽を用いて簡易的に作った介護用入浴環境。浴槽から溢れるお湯が入浴意欲を引き出します。
この経験を通して私は思いました。
日本人にとってのお風呂というのは、単に身体を洗うだけのものではなく、身体を温めるだけのものでもない。
お風呂は、温かいお湯の中でリラックスをし、一緒に入る人と楽しく会話が出来る大切な時間であり場所であると。
そして、入りたいと思うときに入るから、人は楽しんで入れるものなのだと。
それを極めれば、「人として当たり前のお風呂」を提供するということになるでしょう。分かった答えは、非常にシンプルでした。
ご家庭でもこれは全く同じだと思います。
単に身体を洗うだけでなく、お年寄りとご家族が心を穏やかに、良好なコミュニケーションがとれる時間が入浴です。
急かした介助をしたり、荒げた声をかけたりすれば、お年寄りは嫌がります。
お風呂に入ってくれなくなるかもしれません。
頑張って介助されているご家族も報われず傷つくことになるかもしれません。
これでは両者にとって全く良いことがありません。
また、少しずつ立てなくなってくるお年寄りにどのような入浴介助をすればよいのか、不安が募るご家族もいらっしゃることでしょう。
ですから、お年寄りが主体的に動いて入浴出来るための介助方法や、転ぶリスクが少なく安心して入浴出来る環境設定などを
実践していただくことで、お風呂を楽しんで入っていただけるお年寄りがきっと増えると思います。
私は介護施設に在職中に、全く立てない重度のお年寄りにもヒノキの浴槽に入っていただき、私も一緒にお風呂を楽しんできました。
そして、入浴を通して元気になるお年寄りの姿を見てきました。
そこで得られたノウハウを、ご家庭でも出来るカタチでこれから少しずつ書かせていただこうと思います。
お年寄りのために頑張るご家族の参考になれば幸いです。