歩くってどんなこと?(歩けるようにするための運動について)
2016/05/30
歩くとは、実は結構レベルの高いことをしているんですね。
「立つ」の項で重心と支持基底面の話をしていますので、詳しくは「立つ」ということについて考えるを参照してもらうとして、「歩く」というのは実は「転倒を繰り返しながら転倒せずにいる状態」と言い換えることができるのです。
ということでそのことについて少しお話しさせてください。
重心が支持基底面から外れて元に戻せない状態で転ぶことは「立つ」ということについて考えるでお話ししました。
では、我々が普通に歩いている場合、歩行の中で片足だけで立っている瞬間があり、その間は非常に小さな支持基底面になってしまっています。
しかも重心はその支持基底面の中には落ちていません。この瞬間はまさしく転倒へむけて一直線!ということになります。
でも、私たちは簡単には転びません。
それは本当に転んでしまう前に反対の足が地面に着いて、新しい支持基底面が作られ、その中に重心が落ちている状態となるため安定した立位になり転倒せずに済んでいるのです。
安定→不安定→安定、これを繰り返しているのが歩行です。
もし足がちゃんと着地しなかった、着地しても大きく体が傾いてしまっているといったハプニングが起きれば転んでしまいます。
そんな不安定な状態を繰り返しているわけです。
高齢者がよく転ぶのは個人によって理由は違うと思います。
ですがそもそも歩行そのものが転倒しそうになることを繰り返していると考えれば転倒するのも無理はない、ともいえます。
さて、歩行とは転倒と隣り合わせだということはわかるかと思いますが、もう少しシンプルに考えてみます。
歩行を構成する要素はいろいろとありますが、重心の移動、という観点で見た場合、歩行の要素を3つに分けて考えることができます。
①重心の前後移動
②重心の左右移動
③重心の上下移動
①重心の前後移動
基本的に私たちは歩くときは前にしか歩きませんが、ちょっとしたことで一歩下がる、といった動作も行うことがあります。
例えば、誰かに道を譲るときに一歩下がったり、トイレのドアを開けるときに一歩下がったり、ちょっとふらついたときに一歩後ろに戻ったりすることですね。
ですので、重心をスムーズに前後へ移動できることが必要です。
②重心の左右移動
歩くという動作は右足で体重を支えながら左足を振り出し、次に左足で体重を支えながら右足を振り出す、という動作を連続して行います。
重心を左右に移動させている状態になります。
③重心の上下移動
歩く前に我々は立ち上がらないと歩けません。
また歩きながらもほんの少しですが重心が上下に揺れながら歩いています。
この揺れが急激 な揺れにならないように身体の各部で調整しながら歩いているんですが、重心の上下移動がスムーズにできるからこそこの揺れの調整もできているといえます。
この3つの重心移動がすべてスムーズにできている人は実は歩けます。
そのチェックと、実際の運動方法についてお伝えします。
この方法は歩く練習と同じ効果があるのですが、座ってやるので転ぶ心配がありません。チェックとしても、運動としてもおすすめです。
1.重心の前後移動の運動
椅子に座って前屈みの運動を行います。
そして身体を起こしてしっかりと背筋を伸ばします。
これを繰り返すことができる人は、しっかりと重心の前後移動ができています。
この際にできるだけ身体の真ん中を頭が通るように前屈みができることが理想です。
また、前に屈み込んだ際に、地面に手がつく、または足首くらいまで手が届けば十分です。
運動として行う場合はこれを20~30回くらい行うといいですね。
2.重心の左右移動の運動
ベッドなどに座り、座ったままの姿勢で横にいざります。
足の力が弱いようであれば手をつきながらやってもらってもかまいません。
一般的に片麻痺などの方の場合、麻痺側への移動が苦手になります。
これを繰り返して左右どちらにも行うことができる人はしっかりと重心の左右移動ができています。
ポイントはお尻はあまり高く上げる必要はない、ということです。
可能であれば手は膝の上に置いた状態でやると下肢の筋トレ効果をとても期待できる運動になる、ということです。
一般の介護用ベッドで5~10往復もするとかなりいい運動量になりますね。
3.重心の上下移動の運動
椅子やベッドからの立ち座りの運動を行います。
立ち上がりが一番転ぶ可能性が高くなりますので、立ち上がりの運動を行うときはベッド柵や何かに掴まりながらやることで転倒リスクを下げることができます。
これを繰り返して行うことができる人は立ち上がりそのものもそうですが、重心の上下移動をスムーズに行えることになります。
ポイントは立ち上がった際にしっかりと背筋を伸ばして立ち上がること。
座る際にお尻がドスン!とならないように座ること。
このあたりのポイントを押さえることができればかなり下肢の筋トレ効果も出てくるでしょう。
おおよそ20~30回程度立ち座りができると言うことありません。
この3つの運動は途中で休みながらでも構いません。
この3つの運動ができる人はほぼ例外なく歩けます。
そして歩くことが難しい人であっても、この運動をしっかりと行うことで歩くための基本的な体力をつけることができます。
最後にこの運動ですが、実はこの3つの運動、介護用ベッドを使って行う場合には簡単に運動の強度を調整できます。
ベッドの高さを上げると楽にできる運動。ベッドの高さを下げるときつい運動に変わります。
まずは少しだけ高い高さではじめてください。
慣れてきたころに、行う運動の回数を増やすかベッドの高さを低くすることで運動強度を上げてください。
本人の関節の動く範囲や動きやすさなどを考えて高さと回数の組み合わせで調整するとよいかと思います。
最近足腰が弱ってきてるけど膝を痛がって歩いてくれない、転びそうだから歩く練習はちょっと…というような場合など、このように要素に分解した運動で代用することで歩行訓練と同じ効果をより安全で簡単に手に入れられるので役立ててください。
「立つ」の項で重心と支持基底面の話をしていますので、詳しくは「立つ」ということについて考えるを参照してもらうとして、「歩く」というのは実は「転倒を繰り返しながら転倒せずにいる状態」と言い換えることができるのです。
ということでそのことについて少しお話しさせてください。
重心が支持基底面から外れて元に戻せない状態で転ぶことは「立つ」ということについて考えるでお話ししました。
では、我々が普通に歩いている場合、歩行の中で片足だけで立っている瞬間があり、その間は非常に小さな支持基底面になってしまっています。
しかも重心はその支持基底面の中には落ちていません。この瞬間はまさしく転倒へむけて一直線!ということになります。
でも、私たちは簡単には転びません。
それは本当に転んでしまう前に反対の足が地面に着いて、新しい支持基底面が作られ、その中に重心が落ちている状態となるため安定した立位になり転倒せずに済んでいるのです。
安定→不安定→安定、これを繰り返しているのが歩行です。
もし足がちゃんと着地しなかった、着地しても大きく体が傾いてしまっているといったハプニングが起きれば転んでしまいます。
そんな不安定な状態を繰り返しているわけです。
高齢者がよく転ぶのは個人によって理由は違うと思います。
ですがそもそも歩行そのものが転倒しそうになることを繰り返していると考えれば転倒するのも無理はない、ともいえます。
さて、歩行とは転倒と隣り合わせだということはわかるかと思いますが、もう少しシンプルに考えてみます。
歩行を構成する要素はいろいろとありますが、重心の移動、という観点で見た場合、歩行の要素を3つに分けて考えることができます。
①重心の前後移動
②重心の左右移動
③重心の上下移動
①重心の前後移動
基本的に私たちは歩くときは前にしか歩きませんが、ちょっとしたことで一歩下がる、といった動作も行うことがあります。
例えば、誰かに道を譲るときに一歩下がったり、トイレのドアを開けるときに一歩下がったり、ちょっとふらついたときに一歩後ろに戻ったりすることですね。
ですので、重心をスムーズに前後へ移動できることが必要です。
②重心の左右移動
歩くという動作は右足で体重を支えながら左足を振り出し、次に左足で体重を支えながら右足を振り出す、という動作を連続して行います。
重心を左右に移動させている状態になります。
③重心の上下移動
歩く前に我々は立ち上がらないと歩けません。
また歩きながらもほんの少しですが重心が上下に揺れながら歩いています。
この揺れが急激 な揺れにならないように身体の各部で調整しながら歩いているんですが、重心の上下移動がスムーズにできるからこそこの揺れの調整もできているといえます。
この3つの重心移動がすべてスムーズにできている人は実は歩けます。
そのチェックと、実際の運動方法についてお伝えします。
この方法は歩く練習と同じ効果があるのですが、座ってやるので転ぶ心配がありません。チェックとしても、運動としてもおすすめです。
1.重心の前後移動の運動
椅子に座って前屈みの運動を行います。
そして身体を起こしてしっかりと背筋を伸ばします。
これを繰り返すことができる人は、しっかりと重心の前後移動ができています。
この際にできるだけ身体の真ん中を頭が通るように前屈みができることが理想です。
また、前に屈み込んだ際に、地面に手がつく、または足首くらいまで手が届けば十分です。
運動として行う場合はこれを20~30回くらい行うといいですね。
2.重心の左右移動の運動
ベッドなどに座り、座ったままの姿勢で横にいざります。
足の力が弱いようであれば手をつきながらやってもらってもかまいません。
一般的に片麻痺などの方の場合、麻痺側への移動が苦手になります。
これを繰り返して左右どちらにも行うことができる人はしっかりと重心の左右移動ができています。
ポイントはお尻はあまり高く上げる必要はない、ということです。
可能であれば手は膝の上に置いた状態でやると下肢の筋トレ効果をとても期待できる運動になる、ということです。
一般の介護用ベッドで5~10往復もするとかなりいい運動量になりますね。
3.重心の上下移動の運動
椅子やベッドからの立ち座りの運動を行います。
立ち上がりが一番転ぶ可能性が高くなりますので、立ち上がりの運動を行うときはベッド柵や何かに掴まりながらやることで転倒リスクを下げることができます。
これを繰り返して行うことができる人は立ち上がりそのものもそうですが、重心の上下移動をスムーズに行えることになります。
ポイントは立ち上がった際にしっかりと背筋を伸ばして立ち上がること。
座る際にお尻がドスン!とならないように座ること。
このあたりのポイントを押さえることができればかなり下肢の筋トレ効果も出てくるでしょう。
おおよそ20~30回程度立ち座りができると言うことありません。
この3つの運動は途中で休みながらでも構いません。
この3つの運動ができる人はほぼ例外なく歩けます。
そして歩くことが難しい人であっても、この運動をしっかりと行うことで歩くための基本的な体力をつけることができます。
最後にこの運動ですが、実はこの3つの運動、介護用ベッドを使って行う場合には簡単に運動の強度を調整できます。
ベッドの高さを上げると楽にできる運動。ベッドの高さを下げるときつい運動に変わります。
まずは少しだけ高い高さではじめてください。
慣れてきたころに、行う運動の回数を増やすかベッドの高さを低くすることで運動強度を上げてください。
本人の関節の動く範囲や動きやすさなどを考えて高さと回数の組み合わせで調整するとよいかと思います。
最近足腰が弱ってきてるけど膝を痛がって歩いてくれない、転びそうだから歩く練習はちょっと…というような場合など、このように要素に分解した運動で代用することで歩行訓練と同じ効果をより安全で簡単に手に入れられるので役立ててください。
この記事を書いた人
昭和49年生。熊本県熊本市出身。
平成9年西日本リハビリテーション学院理学療法学科夜間部卒業。
夜間学校と平行して病院での介護助手を経験し、排泄や食事、起きて過ごすことといった当たり前の生活行動が人を支えることを学ぶ。
卒業後病院経験を経て、訪問診療のクリニックで訪問リハビリテーションに黎明期から携わる。退院後の生活を支えるだけでなく、医師との密な連携の中で自宅での看取りや癌や難病などの療養支援を行う。
自治体の住宅改修のアドバイザーも務め、障害の特性に合わせるだけでなく家族情況や予算など実生活に即した視点を持つ。
理学療法士養成校での専任講師を経て現在は複数の施設に関わりながら、新人教育のフォローなど利用者支援以外でも活躍している。
地域生活をフィールドに、楽に暮らす=心地よく生きることを自他に推奨する、理学療理学療法士っぽくない理学療法士。
平成9年西日本リハビリテーション学院理学療法学科夜間部卒業。
夜間学校と平行して病院での介護助手を経験し、排泄や食事、起きて過ごすことといった当たり前の生活行動が人を支えることを学ぶ。
卒業後病院経験を経て、訪問診療のクリニックで訪問リハビリテーションに黎明期から携わる。退院後の生活を支えるだけでなく、医師との密な連携の中で自宅での看取りや癌や難病などの療養支援を行う。
自治体の住宅改修のアドバイザーも務め、障害の特性に合わせるだけでなく家族情況や予算など実生活に即した視点を持つ。
理学療法士養成校での専任講師を経て現在は複数の施設に関わりながら、新人教育のフォローなど利用者支援以外でも活躍している。
地域生活をフィールドに、楽に暮らす=心地よく生きることを自他に推奨する、理学療理学療法士っぽくない理学療法士。