身体状況に合わせた車椅子の選び方
松村大地
2016/04/12

今回は、「車椅子を漕ぐ」という移動手段を達成するために、知っておくと便利な、体に合った車椅子の選び方についてお話しして行きたいと思います。

ちなみに、ここでは、車椅子を漕ぐことに焦点を当てますので、特に高齢者が車椅子に座る利点やなぜ体に合った車椅子を選ぶ必要性があるのかなどは、
ぜひこちらのサイト(http://www.techno-aids.or.jp/research/vol18.pdf)
を参照してください。
 


・効率的に「車椅子を漕ぐ」ポイント
漕ぐということは、自らの力で車椅子を操作できるという条件が必要になってきます。

ここでは右片麻痺の方を想定してお話しを展開します。


【ケース】
右片麻痺でも左手足が使える能力がある例でポイントを述べていきます。


左足で力強く蹴れるか

効率的に使用できるためのポイントとして挙がるのが、一つは左足で蹴れるかです。

効率的という点で確認すべきはざっくりと2つです。

座高(車椅子の座る面の高さ)とシートの奥行きです。
 

座高は適切か

座高を簡単にみるポイントは、フットレスト(足を乗せる台)から左足を下ろし、股・膝関節が直角になっているかをみます。

もちろんクッションがあればクッションに座っての確認が必要です。

股関節が曲がりすぎると漕ぎにくいですし、反対に曲がりすぎないと一見漕ぎやすそうですが
前へ足を伸ばしずらくなるため効率的とは言えません。


シートの長さは適切か

シートの長さ、つまり奥行きは、お尻をシートの奥まで入れ、

膝窩(膝の裏)から3〜4横指ほどが入るかで簡単に確認できます。

多少余裕があった方が漕ぎやすくなりますし、膝窩が過度に圧迫されることを避けられます。


 

 

左手でタイヤを動かせるか

 左手でタイヤを動かす場合には、左の肩関節と肘関節の動きを確保できるかがポイントとなります。

確保できると効率的に左手を使用して移動することが可能となります。

みるべき点は3つあり、座幅が広すぎないか、タイヤの位置が適切か、

左肘関節を軽く曲げた位置でタイヤをつかめるかです。


座幅が広すぎないか。

つまりは車椅子が体に合っているかです。

座幅とは車椅子の座るスペースの横幅のことであり、自身の腰幅に対して適しているか確認します。

車椅子に座り、腰幅+2〜3横指入れば適した幅と簡単に判断できます。

それより幅が大きいとタイヤを動かす際に左腕がアームレスト(肘掛け)に当たり

擦過傷を引き起こす原因となりえます。


タイヤの位置が適切か

効率的にタイヤを動かす上で、タイヤの位置をみる必要があります。

タイヤの位置が前すぎても後ろすぎても動かしにくいですし、

後ろすぎると肩関節を痛める可能性もあります。

横からみて耳の穴と車軸(タイヤの真ん中)が一直線で結べるかをみるか簡単に判断できます。


左肘関節を軽く曲げた位置でタイヤをつかめるか。

ポイントの通り、タイヤをつかむ際に左肘が軽く曲がっているかが重要です。

肘が伸びていたり、直角ほどに曲がっているとこまめにタイヤを動かすこととなり非効率です。

効率的に動かす方法ですが、時計をイメージします。

左肘を軽く曲げた位置を12時として、そこから2時まで引き、10時まで肘を伸ばします。

しかし片手でタイヤを動かしますので、1時から11時ほどのイメージで動かしたほう

片手でもまっすぐ進むことが多いかと思いますので、個人に合った動かし方を見つけることが必要です。


 

以上、右片麻痺の方で、かつ左手足が動く・使えるという能力をお持ちの方に対して、効率的に車椅子を漕ぐポイントを簡単にお話してきました。

もちろん理学療法士や福祉用具専門相談員に相談するほうが確実ですが、

上記のポイントだけでも抑えておくと、専門職がいなくても問題をみつけたり解決できることがたくさんあります。

 車椅子を漕ぐにはそれぞれやりやすい方法があります。

足だけで漕ぐ方が良い場合、手だけのほうが良い場合、手足両方を使うほうが良い場合とありますので、いずれも試すことをお勧めします。

また、車椅子を自身で漕ぐことができなくても、電動車椅子を屋内で使用する方もたくさんいます。

その環境に対して、どういった車椅子が使用できそうか、どの車椅子だったら一人で移動できそうか、などの条件もあります。

それらの条件を踏まえた上でも能力にあった車椅子の選定が必要となってきます。



この記事を書いた人
理学療法士。 千葉県松戸市出身。回復期リハビリテーション病院を経て現在、在宅総合ケアセンターで訪問・通所リハに従事。 対象者に対して限られた時間でのリハ以上に、環境や役割次第で自ら主体的になれる場面にこそ効果が発揮された経験をもとに、「今を素晴らしい今に」をモットーに役割創出につながるリハビリテーションを展開している。 また現場で「介護」と「リハ職(セラピスト)」の距離感を感じ、医療と介護と、そしてリハが協働できる場を創出すべく、現在は HEISEI KAIGO LEADERS《PRESENT》運営メンバーとしても活動している。