排泄に関して事前に準備しておくポイント
渡部 ちはる
2016/04/12

排泄に関しての介護のポイント

排泄というのは、とてもナイーブな生活項目のひとつです。

単に、生理的な現象というだけではなく、人によっては、本を読んだり、ほっと一息ついたりする、とてもパーソナルな部分です。

よって、慎重に方法選択をせねばなりません。

今回は、少しでも、ご本人も、ご家族も、「こころ」と「からだ」が楽になる、そんな排泄介助についてお話できたらと思います。
 
まずは、排泄の介助をする前に、こころ、からだ、生活と、大きく分けて3つのポイントの情報収集が必要です。

これらの状況に合わせて、動作方法や介助方法、環境調整などを行っていきます。

ただし、これらを全部行うのは、とっても大変です。

医療や介護に携わるスタッフと一緒に検討をして頂くと、たくさんのヒントをもらうことができます。
無理は禁物です。
 

〇こころ

 排泄を介助してもらうことは、恥ずかしさや抵抗感などがあり、排泄そのものに緊張が生じます。

ご本人とコミュニケーションを取り、こんな思いがあって、ここをお手伝いするよ!という意思を伝えてみてください。

例えば・・・、「病気で、足腰が弱っているから、少しだけ洋服の上げ下げのときにだけ、手伝わせて!」という具合に、どうして、どんな風に、排泄介助をするのかを伝え、納得頂いたり、こころ構えをして頂いたりするだけで、導入がスムーズになります。

 また、介助は、する・されるの関係ではなく、共に一つの課題に取り組むという、パートナーとしての関係があります。

一緒に、目標を決めて、達成に向かうことはとても大切です。
「今日は、立ち上がるときに自分で踏ん張ってくれると、助かるな!」とか、「次、これができたら、一緒におすし食べに行っちゃおう!」とか、一緒に同じ課題に取り組んでいることを意識する、頑張った先に何かよい事が待っているそんな時間になると、とても良いと思います。
 

〇からだ

ご本人の、症状や、状態を知ることが大切です。その情報は、医療や介護のスタッフが沢山もっています。情報収集するのに必要な項目です。

□症状
麻痺や、筋力低下の状況は?
お薬による排泄コントロールの状況は?
尿意・便意の状況は?

□排泄のリズム
頻度は?
量は?
どんな誘導の仕方をしていたのか、きっちり出ていたのか?
昼間・夜間はどう?
水分はどれくらい摂取していた?                    

□動作
医療や介護スタッフが行っていた、介助の仕方はどんな方法?
どの行程ができ、どの行程ができない?
移動、立位保持、便座への座位、排泄、清拭、洗浄、衣服の操作
パット・おむつ操作、手洗いなど
 

〇生活

 幼少期行っていた習慣や、ご自宅の環境、動作のこだわりなどは人それぞれです。その習慣が変わるだけでも、ストレスがかかって、排泄ができなくなってしまう方もいらっしゃいます。

□様式 和式/洋式
□特徴 拭き方、ウォシュレット使用、順番、時間などは?
□こだわり トイレ内で行うこと、グッズなどは?
 
これらを知ることで、ご本人の全体像が見えてきます。

その上で、一番何に重きをおくのかを考えます。

できるだけ自分の力で?それとも、楽ちんな動作重視?答えは無数にあります。

その方らしい、そしてご本人も、ご家族も無理の無い答えを出す、ヒントやきっかけ探しになったらと思います。


この記事を書いた人
2004年医療法人社団KNI(旧北原脳神経外科病院)に入職。リハビリテーション科の作業療法士として、急性期、回復期、在宅(外来・通所リハビリテーション・一部医療保険下訪問リハビリテーション)の患者様に対して、治療的介入のみならず、障がいをお持ちの方の全人的復権を目指し、リハビリテーションを行う。その間、主任業務を通し、リハビリテーション科、作業療法部門のチームマネジメントや後輩育成のための教育業務、対外的な発表(学会や学校への講義活動、ドラマ監修補助)等もおこなってきた。現在は、法人内における、法人教育、新入職員教育におけるマネジメントを行う。 その他、2012年より、保険外事業の一環である、“医療をツールとしたまちづくり事業”に参加。八王子では障がい者によるファーム事業、「苗びりテーション」事業、宮城県東松島市では、東北復興プロジェクト、医療をツールとした病気にならないまち構想における新たな医療の形を具現化するべく、事務管理、事業構想、広報等に従事。現在に至る。