座っていられない、を考える。
2016/04/25
高齢者介護をしていると、座っていられない人を見ることがあります。
何度も座り直しをしてもやっぱりずれてきてしまう、ずれた姿勢を直そうとゴソゴソすることでさらにずれがひどくなってしまう、そんな場面を見ることが少なくありません。
なぜできないのか、そしてどうすればできるのかを考えてみましょう。
<なぜできないのか>
座っていられない理由は大きく分けると2つに分けられます。
本人の問題と椅子の問題です
本人の問題は
1. そもそも座れない場合
2. 座れるけど長時間座っていられない場合
椅子の問題は
1. 奥行きのサイズ
2. 横のサイズ
3. 高さのサイズが合っていない場合
になります。
<本人の問題>
①そもそも座れない場合
これは言うまでもありません。
寝たきりの方や病気によって座る姿勢をとることができない場合などがあります。
②座れるけど長時間座っていられない場合
これはよくある原因の一つに「腰が据わっていない」「首が据わっていない」場合があります。
ベッドや椅子などの平らなところに座って自分で身体や首を
まっすぐに保てなければ腰や首が据わっていない可能性が非常に高いといえるでしょう。
このような方の場合、当たり前ですが、普通の椅子に座ることが難しくなってしまいます。
無理に普通の椅子に座らせると、簡単に姿勢が崩れて座っていられなくなりますので、
背もたれを倒して使うことができるリクライニング車いすなどがおすすめです。
背もたれを倒すことで背中に体重を分散させて、上半身を安定させて座りやすくすることができます。
では、自分で座っていられるのに崩れてしまう、つまり座っている椅子が身体のサイズに合っていない場合について考えてみます。
<椅子の問題>
①奥行きのサイズが問題
人が椅子に座る場合、できるだけ深く腰掛けて座ることが多いかと思います。
ですが、この座面の奥行きが座っているご本人のお尻~膝裏までの長さより長いと
しっかりと深く腰掛けることができなくなります。
この状態で背もたれにもたれて楽に座ろうとすると、お尻と背もたれの間に隙間ができてしまい、
後ろに倒れるようにして座ることになります。
そしてこの姿勢を長時間続けていると崩れた姿勢になってしまいます。
これは非常に多くの場面で見られます。
実は現在の高齢者のお尻~膝裏までの長さの平均が37~38cm程度であるのに対して、
多くの椅子や車いすの座面の奥行きのサイズは40cm 程度あるのです。
つまり、サイズが合わないのでしっかりとお尻を深くまで引いて、いい姿勢で座ることができません。
このとき注意して欲しいのは奥行きを見るときはお尻が着いている座面と背もたれの間に隙間があるかをみることです。
ひじ掛けがある椅子や車いすではひじ掛け部分が邪魔をして隙間があるかどうか一見して分かりにくい場合があります。
●奥行きのサイズが問題のときの対処法
座面の奥行きが長すぎて深く腰掛けることができないために姿勢が崩れてくるのであれば、
背中に必要な厚さのクッションを入れてみるといいです。
こうすることで座る深さは変わりませんが、クッションが背もたれ代わりになることで
奥行きの合った椅子を作り出すことができます。
しっかりと奥まで深く座ることができるようになるため、姿勢崩れが起きにくくなります。
②横のサイズの問題
実は座面の奥行きばかりが原因ではありません。
座面の幅が広すぎることで側方へ倒れてしまうこともよく見られます。
ちなみに、この横幅というのはひじ掛けのある椅子や車いすなど、横の高さのある椅子のことです。ひじ掛けのないタイプではありません。
一般的に適正な椅子の幅というのは(車いすなどの場合で)座った状態で太ももやお尻とひじ掛けの隙間が指1~2本分程度左右それぞれで空くくらいがいいと言われています。
ですが、これが大きすぎることがよく見られます。
このサイズが大きすぎると横に倒れやすくなり姿勢の崩れが起きやすくなってしまいます。
いつも体が斜め倒れてしまうな、というときは椅子の横のサイズが合っているか確かめてみましょう
●横のサイズが問題のときの対処法
座面の幅が広すぎることで起こる横への姿勢崩れについてですが、車いすを利用している場合などは、
バスタオルなどを丸めてその空きすぎたスペースを埋めることで解決する場合があります。
隙間が埋まることでお尻が安定して横への姿勢崩れを防ぐことができるようになります。
③高さのサイズが合っていない場合
最後に足元です。
椅子が高すぎると、足がプラプラして地面に足の裏をしっかりつけません。
これでは踏ん張ることができません。
また椅子が低すぎると膝が大きく曲がり、足の裏はつくものの太ももが上がってしまって
お尻だけで体重を支えることになり姿勢が崩れます。
座っている時、足元はかなり重要な役目を果たしています。
足の裏をしっかりと地面につけることで体重を分散したり、無意識の踏ん張る力が体を安定させたりしています。また、太ももが座面にぴったりつくことで太ももでも体重を支えているのです。
ですので、高すぎる・低すぎるというのも姿勢崩れの原因になってしまいます。
これも非常によく見る光景ですね。
●高さのサイズが問題のときの対処法
ポイントは股関節が90度、膝関節が90度曲がっている状態で、足裏が地面についている姿勢を作ることです。
座面の高さが高すぎる場合は、椅子の足を切って低くできればいいですがテーブルの高さと兼ね合いもありますから足台を使うなどして足をしっかりと地面につくようにしてあげるといいでしょう。
足台は電話帳や漫画雑誌をガムテープでぐるぐる巻きにしても作れます。ページを破くことで高さを調整できるのでお勧めです。
座面の高さが低すぎる場合は、座面に厚みのあるクッションを入れて股関節と膝関節がそれぞれおよそ90度程度になるよう調整することで安定した座位をとることができるようになります。クッションはふわふわしたものよりしっかりとした硬さのあるものがいいです。可能であれば福祉用具のクッションを使うことをおすすめします。
このようにポイントはいくつかありますが、自分で座れるにも関わらず姿勢が崩れてくる場合は、椅子に原因がある場合があります。
まとめ
座面の奥行きが長すぎる
→背中にクッションを入れて奥行きを調整
座面の幅が広すぎる
→座って左右の隙間をバスタオル等を入れて調整
座面が高すぎて足が地面についていない
→足台の調整
座面が低すぎてお尻だけで座ってる
→お尻のしたにクッションを入れて高さを調整
まずはこういった点をチェックしてみると座れるようになるかもしれませんね。
何度も座り直しをしてもやっぱりずれてきてしまう、ずれた姿勢を直そうとゴソゴソすることでさらにずれがひどくなってしまう、そんな場面を見ることが少なくありません。
なぜできないのか、そしてどうすればできるのかを考えてみましょう。
<なぜできないのか>
座っていられない理由は大きく分けると2つに分けられます。
本人の問題と椅子の問題です
本人の問題は
1. そもそも座れない場合
2. 座れるけど長時間座っていられない場合
椅子の問題は
1. 奥行きのサイズ
2. 横のサイズ
3. 高さのサイズが合っていない場合
になります。
<本人の問題>
①そもそも座れない場合
これは言うまでもありません。
寝たきりの方や病気によって座る姿勢をとることができない場合などがあります。
②座れるけど長時間座っていられない場合
これはよくある原因の一つに「腰が据わっていない」「首が据わっていない」場合があります。
ベッドや椅子などの平らなところに座って自分で身体や首を
まっすぐに保てなければ腰や首が据わっていない可能性が非常に高いといえるでしょう。
このような方の場合、当たり前ですが、普通の椅子に座ることが難しくなってしまいます。
無理に普通の椅子に座らせると、簡単に姿勢が崩れて座っていられなくなりますので、
背もたれを倒して使うことができるリクライニング車いすなどがおすすめです。
背もたれを倒すことで背中に体重を分散させて、上半身を安定させて座りやすくすることができます。
では、自分で座っていられるのに崩れてしまう、つまり座っている椅子が身体のサイズに合っていない場合について考えてみます。
<椅子の問題>
①奥行きのサイズが問題
人が椅子に座る場合、できるだけ深く腰掛けて座ることが多いかと思います。
ですが、この座面の奥行きが座っているご本人のお尻~膝裏までの長さより長いと
しっかりと深く腰掛けることができなくなります。
この状態で背もたれにもたれて楽に座ろうとすると、お尻と背もたれの間に隙間ができてしまい、
後ろに倒れるようにして座ることになります。
そしてこの姿勢を長時間続けていると崩れた姿勢になってしまいます。
これは非常に多くの場面で見られます。
実は現在の高齢者のお尻~膝裏までの長さの平均が37~38cm程度であるのに対して、
多くの椅子や車いすの座面の奥行きのサイズは40cm 程度あるのです。
つまり、サイズが合わないのでしっかりとお尻を深くまで引いて、いい姿勢で座ることができません。
このとき注意して欲しいのは奥行きを見るときはお尻が着いている座面と背もたれの間に隙間があるかをみることです。
ひじ掛けがある椅子や車いすではひじ掛け部分が邪魔をして隙間があるかどうか一見して分かりにくい場合があります。
●奥行きのサイズが問題のときの対処法
座面の奥行きが長すぎて深く腰掛けることができないために姿勢が崩れてくるのであれば、
背中に必要な厚さのクッションを入れてみるといいです。
こうすることで座る深さは変わりませんが、クッションが背もたれ代わりになることで
奥行きの合った椅子を作り出すことができます。
しっかりと奥まで深く座ることができるようになるため、姿勢崩れが起きにくくなります。
②横のサイズの問題
実は座面の奥行きばかりが原因ではありません。
座面の幅が広すぎることで側方へ倒れてしまうこともよく見られます。
ちなみに、この横幅というのはひじ掛けのある椅子や車いすなど、横の高さのある椅子のことです。ひじ掛けのないタイプではありません。
一般的に適正な椅子の幅というのは(車いすなどの場合で)座った状態で太ももやお尻とひじ掛けの隙間が指1~2本分程度左右それぞれで空くくらいがいいと言われています。
ですが、これが大きすぎることがよく見られます。
このサイズが大きすぎると横に倒れやすくなり姿勢の崩れが起きやすくなってしまいます。
いつも体が斜め倒れてしまうな、というときは椅子の横のサイズが合っているか確かめてみましょう
●横のサイズが問題のときの対処法
座面の幅が広すぎることで起こる横への姿勢崩れについてですが、車いすを利用している場合などは、
バスタオルなどを丸めてその空きすぎたスペースを埋めることで解決する場合があります。
隙間が埋まることでお尻が安定して横への姿勢崩れを防ぐことができるようになります。
③高さのサイズが合っていない場合
最後に足元です。
椅子が高すぎると、足がプラプラして地面に足の裏をしっかりつけません。
これでは踏ん張ることができません。
また椅子が低すぎると膝が大きく曲がり、足の裏はつくものの太ももが上がってしまって
お尻だけで体重を支えることになり姿勢が崩れます。
座っている時、足元はかなり重要な役目を果たしています。
足の裏をしっかりと地面につけることで体重を分散したり、無意識の踏ん張る力が体を安定させたりしています。また、太ももが座面にぴったりつくことで太ももでも体重を支えているのです。
ですので、高すぎる・低すぎるというのも姿勢崩れの原因になってしまいます。
これも非常によく見る光景ですね。
●高さのサイズが問題のときの対処法
ポイントは股関節が90度、膝関節が90度曲がっている状態で、足裏が地面についている姿勢を作ることです。
座面の高さが高すぎる場合は、椅子の足を切って低くできればいいですがテーブルの高さと兼ね合いもありますから足台を使うなどして足をしっかりと地面につくようにしてあげるといいでしょう。
足台は電話帳や漫画雑誌をガムテープでぐるぐる巻きにしても作れます。ページを破くことで高さを調整できるのでお勧めです。
座面の高さが低すぎる場合は、座面に厚みのあるクッションを入れて股関節と膝関節がそれぞれおよそ90度程度になるよう調整することで安定した座位をとることができるようになります。クッションはふわふわしたものよりしっかりとした硬さのあるものがいいです。可能であれば福祉用具のクッションを使うことをおすすめします。
このようにポイントはいくつかありますが、自分で座れるにも関わらず姿勢が崩れてくる場合は、椅子に原因がある場合があります。
まとめ
座面の奥行きが長すぎる
→背中にクッションを入れて奥行きを調整
座面の幅が広すぎる
→座って左右の隙間をバスタオル等を入れて調整
座面が高すぎて足が地面についていない
→足台の調整
座面が低すぎてお尻だけで座ってる
→お尻のしたにクッションを入れて高さを調整
まずはこういった点をチェックしてみると座れるようになるかもしれませんね。
この記事を書いた人
昭和49年生。熊本県熊本市出身。
平成9年西日本リハビリテーション学院理学療法学科夜間部卒業。
夜間学校と平行して病院での介護助手を経験し、排泄や食事、起きて過ごすことといった当たり前の生活行動が人を支えることを学ぶ。
卒業後病院経験を経て、訪問診療のクリニックで訪問リハビリテーションに黎明期から携わる。退院後の生活を支えるだけでなく、医師との密な連携の中で自宅での看取りや癌や難病などの療養支援を行う。
自治体の住宅改修のアドバイザーも務め、障害の特性に合わせるだけでなく家族情況や予算など実生活に即した視点を持つ。
理学療法士養成校での専任講師を経て現在は複数の施設に関わりながら、新人教育のフォローなど利用者支援以外でも活躍している。
地域生活をフィールドに、楽に暮らす=心地よく生きることを自他に推奨する、理学療理学療法士っぽくない理学療法士。
平成9年西日本リハビリテーション学院理学療法学科夜間部卒業。
夜間学校と平行して病院での介護助手を経験し、排泄や食事、起きて過ごすことといった当たり前の生活行動が人を支えることを学ぶ。
卒業後病院経験を経て、訪問診療のクリニックで訪問リハビリテーションに黎明期から携わる。退院後の生活を支えるだけでなく、医師との密な連携の中で自宅での看取りや癌や難病などの療養支援を行う。
自治体の住宅改修のアドバイザーも務め、障害の特性に合わせるだけでなく家族情況や予算など実生活に即した視点を持つ。
理学療法士養成校での専任講師を経て現在は複数の施設に関わりながら、新人教育のフォローなど利用者支援以外でも活躍している。
地域生活をフィールドに、楽に暮らす=心地よく生きることを自他に推奨する、理学療理学療法士っぽくない理学療法士。