仰向けから横向きへの移動が困難な場合の介助方法
2016/04/21
【寝返りができない × 片マヒ の場合】
寝返りの仕組み
寝返りとはあお向けの状態から横向きに転がる移動手段です。
転がるためには人の体を大きく分けて3つ、「頭部」「上半身」「下半身」のブロックが寝返る方向へ転がらないといけません。
上半身とは胸の骨や背中の骨、その周りの筋肉が含まれます。
下半身とは腰の骨や骨盤、お腹まわりや腰まわりの筋肉が含まれます。
頭部を動かすには首の動き、上半身を動かすには肩甲骨、下半身を動かすには骨盤の動きが大事になっていきます。
さらに、肩甲骨を動かすのに腕の動き、骨盤を動かすのに足の動きが連動して必要になってきます。
また、寝返りの動き方は人それぞれで、「頭部」→「上半身」→「下半身」という順序で動く方もいれば、「下半身」→「上半身」→「頭部」と動く方もいます。
細かく分けると寝返り方は何通りもあり、人が毎回同じ寝返り動作をするとは限りません。
自立支援につながる効率の良い寝返り方法
寝返りを大きく分けると、「①上半身から動き、背中を丸めて転がる方法」と
「②下半身から動き、背中を反らせて転がる方法」があります。
①の方法は、起きあがる動きに繋がりやすく、お腹の筋肉などもしっかり使います。
②の方法は、起きあがる動きに繋がりにくく、背中を反らせてしまうため腰の負担がかかりやすいです。
今回は右片マヒの方が、左側へ寝返りをすることモデルとし、
それぞれ「頭部」「上半身」「下半身」がどこまで動かすことが出来るか、
片マヒの特性を理解してどのように介助しなければならないかということに着目し、
①の方法をベースにして説明したいと思います。
※左片マヒの方が右側へ寝返る仕組みも一緒です。
1. 頭・首の動きの介助方法
寝返りを始めようとする際、先行的に首まわりの筋肉が働いて、頭を動かそうとします。
特に頭を持ち上げることでお腹まわりの筋肉が働き、寝返るための準備がされます。
【頭を持ち上げ、顔を寝返る方向へ向くことがまったくできない場合】
方法①:頭を手で支えて、はじめに顔を寝返り方向へ向かせておく
方法②:枕(バスタオルなどでも可能)を利用して、頭が持ち上がっている姿勢を作り出す
方法③:ベッドのギャッチアップを利用して頭を起こしておく
【頭を持ち上げ、顔を寝返る方向へ向くことができる場合】
方法①:「頭をあげて、左(または右)を向いて」等の声かけをする
※介助方法
・首の隙間から手のひらで優しく後頭部を支えて、頭を持ち上げましょう。
2. 右手の動き、肩甲骨の動きの介助方法
頭の動きが始まったのと同時進行で、上半身が寝返り方向へ動くのが始まります。
この際、右手が寝返る方向に向かって手が伸ばせるか、
右側の肩甲骨が寝返り方向に向かって浮き上がってくるかを見極めて介助していきます。
【右手が寝返る方向へ手を伸ばせない】
方法①:手をお腹へ乗せるように声かけをする
方法②:手をお腹へ乗せるように介助をする
【右の肩甲骨が寝返る方向に浮き上がってこない】
方法①:肩甲骨を支えて、寝返り方向へ介助する
※ 介助方法
・手のひらで肩甲骨を支える
・左の肩に向かい、斜め下へ介助する
・右の肩が、左の肩の上にくるまで介助します
3. 右足の動き、骨盤の動きの介助方法
上半身が寝返り、そのあと自然に下半身が寝返り方向へ動いて横向きになれれば寝返りの完成です。しかし、骨盤の動きがついてこない場合は介助が必要です。
また、足の補助を使って下部体幹の動きを引き出す方法もあります。
【骨盤が寝返る方向へついてこない】
方法①:「腰を回して」等の声かけをする
方法②:膝を立ててもらうことで、骨盤を動きやすくする
※介助方法
膝下に手を入れて、膝を立てる
方法③:右側の骨盤を支えて、寝返り方向へ介助する
※介助方法
右側の骨盤を手のひらで支え、左斜め下に回すように介助する
この記事を書いた人
理学療法士。臨床実習の経験から、「退院後の患者様の人生」に興味を持ち、地域リハビリテーションを学びたいと決意。介護老人保健施設で通所・訪問リハを経験。次第に、「まだ地域でのリハビリが根付いていない場所にリハビリを広めたい」という使命感を持つようになり、合同会社リハビリコンパスに入社。通所介護事業の立ち上げから関わり、デイ統括リーダーとして通所介護を指揮している。
「家族の介護負担軽減に繋がるリハビリテーション」を考え、介護負担感の臨床研究や家族介護教室を実践している。
「家族の介護負担軽減に繋がるリハビリテーション」を考え、介護負担感の臨床研究や家族介護教室を実践している。